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鶴丸か甲南か、それともラ・サールか – 鹿児島県の高校選び

わたしは鶴丸高校の出身である。しかし、鶴丸に入学してから「こんな高校生活を送りたかったわけではなかった」と思ったものだった。

鶴丸高校での苦難(?)については別記事にゆずるとするが、この記事では、高校の進路について考えている方が、納得のいく高校生活を送ったり、自分の希望する進路選択をすることができたりするように、鹿児島県の高校受験について考察してみようと思う。

私は鶴丸高校を卒業後は早稲田大学に進学し、長く塾講師や家庭教師をしていた。その経験も踏まえてお話しする。

本記事では、鶴丸高校、甲南高校、そしてラ・サール高校について主に扱っている。この3校のどれかが少しでも意中にあれば、それなりに参考になるような情報であろう(ことを願う)。

わたしは鹿児島に住むすべての受験生は少なくとも甲南高校を目指すべきだと思っている。
この理由についても後述する。

Lina
早稲田大学卒業後、新卒でフリーランスのライターとして活動をはじめ、派遣社員と正社員(メディカルライター)を経て、現在はロンドン在住。ブログやYouTubeでも情報発信中。趣味はテニス。

合格する可能性が少しでもあるならラ・サールを受験するべき

人によって物事の優先順位は異なる。学業、部活、友人、夢——学生生活において、または人生において、最も大切なものは人それぞれ違う。恋愛が最も大切、という人もいるかもしれない(それも立派な目的であると思う)。

これらのどの項目を優先するかで志望校は必然的に決定する。

最優先事項が「学業」または「就職」で、金銭的に可能であるならば、かつ男性ならば、わたしは絶対にラ・サールをおすすめする(筆者は残念ながら?女であるため、ラ・サールは受験できなかった)。

ラ・サール高校が、鹿児島県で最も優秀な高校であるからだ。言明するまでもなく鹿児島の高校の中ではラ・サールは群を抜いている。

合格実績を見ても、高校の偏差値と進学実績に相関関係が認められる。
ラ・サールと鶴丸の間には明確な差があり、鶴丸と甲南の間にも明確な差がある。

令和4年度進学実績ラ・サール高校鶴丸高校甲南高校
東京大学3760
京都大学870
早稲田(不明)151

ラ・サールには全国から優秀な学生が集まる。鶴丸へは鹿児島県内からのみ。

鶴丸と甲南にも差が生じている。県でトップレベルの実力があるのに、あえて甲南を受ける優秀な生徒はいない。

優秀な教師

日本の教育における問題点はたくさんあるが、概して教員の質が悪いこと、そして塾を前提とした受験勉強が必要であることが、その筆頭であると思う。

塾なしでは、高校受験が難しい。そして、大学受験ともなると、鹿児島には塾や予備校はほとんどない。あっても、優秀な教師に指導してもらうのは難しい。

首都圏に住んでいれば、塾や予備校に通い、そこで優秀な講師や現役の難関大学生に指導を受けることができる。わたしが教えていた塾にも東大卒・東大生の塾講師がいた。

だが、鹿児島の高校生はこのような恩恵には恵まれない。東大を目指していても、東大に受かった先生から学ぶことはできない。

東大や京大などの難関大学を卒業した人が、鹿児島で給料や労働条件が悪い高校の教師や塾の教師になるのは稀だ。必然的に、難関大学の受験に失敗した人、または受験をしなかった人が教師になることが多くなる1

ちなみに鶴丸生は、医学部などの難関学部を除いては、鹿児島大学を受ける人は非常に少ない。鹿児島大学のほとんどの学部のレベルはそれほど高くないからだ。

良い教師に恵まれなくては、難関大学には合格しない。東大の問題が解けない教師に教えられていては、東大には受からない。

しかし、頼れるのは学校の先生だけだ。2

このような問題が鹿児島県の高校生には存在するのだが、これはラ・サールにはない。

ラ・サール生を教えることができない教師は、ラ・サールの教員にはなれないからだ。少なくとも、担当科目においては、東大に合格できるような実力を持つ優秀な人間が教鞭に立っている。

もし難関大学に進学したい、もしくは医者や弁護士になりたいという夢があるのならば、できるだけ優秀な教員がいるラ・サールにいくべきだ。

優秀な友人

優秀なのは教員だけではなく、友人もだ。こちらのほうが大切かもしれない。
周りが優秀であると、自分のレベルも引き上げられる。

友人が優秀だと遅れをとらないように頑張ろうと思うものである。自分が優秀な場合も、友人に追いつかれないようにさらに頑張ろうと思うものである。

また、人それぞれ、得意科目、苦手科目がある。ラ・サールのレベルになると、数学だけなら東大に受かる、英語だけなら東大に受かる、という生徒がほぼ全員であろう。

鶴丸にも1科目だけなら極めて優秀な友人がいくらでもいて、わたしは苦手科目は友達に教えてもらっていた。先生には教えてもらったことはなかった。職員室って入りづらいし。友達ならいくらでも質問できる(それに宿題の内容も教えてもらえる)。

さらに、このような辛い受験期を切磋琢磨した友人は一生の友になる。社会人になった今も、鶴丸の友達とは仲が良いし、会うたびに優秀な彼らに感銘を受ける。

一生の「できる男」という肩書き

ラ・サール高校は、鹿児島県外の人でも多くの人が知っている全国屈指の名門校である。

「出身はラサールです」と言うだけで、瞬時に「この人は優秀だ!」と思われる。どんなに顔が間抜けでも、身だしなみが貧相でも、「ラ・サール出身」と名乗るだけで、優秀な人間だと一目置かれる。

一生涯つづく日本全国どこでも問答無用に「できる男」という肩書きを得たいのならば、ラ・サール一択である。鶴丸ではこうはいかない。

鶴丸卒の筆者が知る限り、ラ・サールに受かって鶴丸に来た人はいない(いるかもしれないが)。しかし、鶴丸にはラ・サールに落ちて鶴丸に来た人がたくさんいた (鶴丸生のフォローをしておくと、そもそもラ・サールに受かるレベルであるけれど受験していない鶴丸生もたくさんいる、親や兄姉が鶴丸の場合が多い)。

以上の理由から、もし大きな夢や希望があり、また学力も伴うのならば、ラ・サールに入ることをおすすめする。

ラ・サールの欠点

しかし、ラ・サールにも欠点はある。主には以下の2点。

・ 男子校
・ 場所

ラ・サールは男子校なので男子生徒しかいない (あたりまえだ)。

男子校には男子校の良さがあるらしいため、男子校がいいという人もいるだろう。実際、何人かのラ・サールの卒業生に「人生やり直せるとしたら、もう一度ラ・サールに入るか」と尋ねたら「入る」と即答していたし、子どももラ・サールに入れたいとも言っていた。

だから、男子校であったり寮での生活をすることは、何らかの価値を与えてくれるものだろう。

しかし、友達とわいわいして、恋をして、彼女を作って、きらきら青春したい…という希望があるならば、極めて難しくなりがちである(恋や彼女を作ることが「きらきら青春」かは個人の価値観でもある)。

ラ・サールの学園祭は「出会いの場」になっているようであるし、女子校との交流も少なからずあるようである。

だが、女子学生との接点は極めて少ない。

そして、谷山にある。市電で天文館まで30分で出られるといっても、、、遠くないですか?
わたしはの実家は鹿児島市であるが反対方向にあったため、谷山はほとんど行動範囲外だった。

彼女ができても、頻繁に会うことはできないし、友達同士でボウリングや映画といった娯楽を楽しむのも難しい。

通学が難しい場合も多い。ラ・サールの名物(?)の寮に入ればよいのだが、寮生活はお金がかかるし、それ以外にも不都合が多いらしい。

ラ・サールにはラ・サールの楽しい高校生活があるようではあるが、ラ・サールの卒業生が時折「野郎ばかりで精神的に健全ではないかもしれないが」という枕詞を使うのは、何らか男子校であることや谷山にあることに不満があったからであろうと予想する。

結果はウソをつかない! 合格実績を見てみよう

というわけで、学業・就職重視で、合格する実力があるならばラ・サールが良いと個人的には感じるのだが、様々な理由でラ・サールにいけない場合もあるだろう。

以下3点が主な理由ではなかろうか。

・ 女子学生
・ 金銭面
・ 学力不足

女子学生の場合、鶴丸をおすすめする。女性が入れる高校のトップが鶴丸だからだ。
理由は、ラ・サールに入学するメリットでも触れたのと同様で教員と友人が主な理由だ。

公立高校の教員は頻繁に転勤があるが、鶴丸で教えている教師は10年程度在籍することも珍しくない。優秀な教員はその代わりが少なく、転勤することができなくなる場合が多いからだ。

鹿児島県には鶴丸卒の高校教師もそこそこいて、彼らは一度は絶対に鶴丸で教鞭をとる。母校だからという理由ではない。他に鶴丸生を教えられる教員がいないので、望んでいなくても鶴丸に配属されることになるという噂だ。3

また、鶴丸と甲南の間には明確な「差」が存在すると書いたが、これはラ・サールが男子校であることが、鶴丸のレベルを甲南から引き離している理由であると考える。

ラ・サールレベルの学力があるがラ・サールに行けない女子生徒が鶴丸に入学するからだ。

鶴丸で優秀な学生の多くが女子生徒だったりしたが、それは非常に優秀な男子学生はラ・サールに行ってしまうからかもしれない。

また、「男子校が嫌」「谷山は無理」という男子生徒は確実に一定数いるから、ラ・サールに受かる実力があるのに、鶴丸に来ているパターンもあった。鶴丸だと恋愛もできるし(実際、鶴丸生はカップルが多かった)。

また、鶴丸には両親のどちらかが鶴丸卒であるというパターンも極めて多い。
同級生に「田舎の神童」タイプの人間がちらほらいたが、絶対にラ・サールに受かっただろうにどうして鶴丸に来たのだろうと思っていたら、親が鶴丸出身であったりした。

兄弟姉妹が全員鶴丸、というケースもある(知性は遺伝してしまうのだろうか)。

このため、鶴丸と甲南の学力的な差はかなりの開きだと感じる。

令和4年度進学実績ラ・サール高校鶴丸高校甲南高校
東京大学3760
京都大学870
早稲田(不明)151

甲南生は東大・京大の合格者がおらず、早稲田1名のみ。わたしは早稲田卒だから、甲南だったら、トップの成績だったようだ。えへへ。笑。

しかし、わたしは鶴丸では決してトップではなかった。トップからはほど遠かった。鶴丸生の中では、よくて中の上、下の上だった時期もあったくらいの成績だ。赤点スレスレの点数を取ったこともあったなあ。化学が酷かった。極めて酷かった。あと日本史。

友人は想像以上に受験において大切

前述してもいるが、友人は受験においてはかなり重要な要素である。再度、念押し。教師よりも重要だと思う。

周りのレベルが高いと、必然的に自分のレベルも底上げされる。ラ・サールで下位にいたとしても、周りの高いレベル合わせた勉強をこなしていると、自分のレベルも徐々に高くなり、難関大学や医学部に合格するレベルまで成長することができる。

ラ・サールや鶴丸に入学すると旧帝大や医学部を目指す友達がたくさんできる。仲いい友人の志が高いと、その友人と一緒に勉強しているだけで、いつの間にか自分も難関大学に合格するものだ(体験談である)。

難しい数学の問題を解ける人がクラスに10人いるのと、1人しかいないのでは、自分自身の勉強のはかどり具合も大違いだ。

隣の席のクラスメイトに気軽に質問するのと、クラストップの逸材と仲良くなって、その人に宿題を見せてもらう間柄になるのでは大違いだ(まあ、友達を「利用」するのはほどほどに)。

志の高い一生の友人との出会いのためにも、自分の学力を上げるためにも、友達の学力が高いことは意外と大切である。

甲南だって名門です

学力や将来のキャリア形成を重視した観点からは「ラ・サール>鶴丸>甲南」という序列ができあがってしまう話をしてきた。

そして、ラ・サールと鶴丸の学力差と鶴丸と甲南の学力差は、それなりに開いているものだと論じてきた。この3校ならば偏差値に比例したものになってしまうのは否めない。

鹿児島県で塾講師をしていて、鶴丸にいけるポテンシャルがある生徒を指導することになったら、絶対に甲南をすすめたりはしない。絶対にだ。

だが、それでも甲南は鹿児島でNo.3の高校である。これも絶対だ。

私立高校の進学コースには、偏差値的に鶴丸や甲南に並ぶ高校があるが、これらの高校よりも甲南のほうがレベルが高いと感じる。

その理由として、鶴丸に受かった人は、私立高校の入試において、学費の全額免除ないし少なくとも半額免除をもらうからだ。私は鹿児島高校を受験したのだが、進学コースで全額免除だった。

進学コースの合格者全員が学費の免除をもらうのかどうかは知らないが、鶴丸や甲南に受かって、私立高校に行くパターンはほぼないと言って良いと考えると、甲南はNo.3である。だが、鶴丸や甲南を受ける生徒が滑り止めとして受験するから、一部の私立高校の進学コースの偏差値が高くなる。

受験生は全員、甲南を第一志望校にしてみるのはアリ?

塾講師をしていたとき、MARCHレベルの大学を志望している生徒に「早慶を目指そう」とアドバイスしていた。

MARCHとは「明治大学・青山学院大学・立教大学・中央大学・法政大学」の5つの大学の頭文字を取った略称である。難関大学とされている私立大学5校であるが、早慶や上智ほど偏差値が高いわけではない。

MARCHもよい大学に違いないが、わたしがあえて「早慶」を視野に入れることを生徒に勧めていた。

これは、早慶という高いレベルを目指すことで、必然的にその下のレベルには受かる実力が身につくからだ。

詳しくは別記事で書いたため省略するが、それと同じことが甲南の受験にもいえる。

だから、もし甲南以下の高校を志望している人がこの記事を読んでいたら、ぜひ甲南高校を視野にいれるのが良いと感じる。

自分の可能性を広げておくことが大切

学力を難関大学に合格できるレベルまで高めるためには、ラ・サール、鶴丸、少なくとも甲南に入学する必要があると感じる。

この3校以外からは、難関大学への道がほとんど閉ざされてしまうからだ。

難関大学や医学部を受けるならば、絶対にラ・サールか鶴丸が良い。学校の授業が、これらの大学を受験する前提で進められるからだ。最難関大学と医学部への進学が少ない甲南では、少々物足りなく感じる可能性がある。

また、鶴丸か甲南を受験して、失敗してしまったときの救護策として私立の進学コースがあると思った方が後悔しないようにも思う。

ただし、私立の進学コースでも、最低限の教育は受けられるから、自分の頑張り次第ではどうにでもなる。早稲田の同期には、情報高校出身の人と志學館高校出身の人が1名ずついた。頭がよい人は、どの高校であっても頭が良い。

また、そもそも鶴丸や甲南を受けるレベルならば、私立高校では学費は免除される。もし鶴丸や甲南に落ちてしまっても、高校で学費はそれほどかからないから、福岡や東京の予備校で浪人して、難関校へ合格するという道もある。

鶴丸生に限っていえば、非常に多くの生徒が浪人する。私のクラスは特に多くて、クラスの3分の2が浪人した。同期の中には4浪した強者すらいる。方法はいくらでもある。

どこの高校に入学しようと、最も大切なのは「自分の可能性を広げておくこと」だと思う。

野球をはじめた10歳の子どもがプロ野球選手になるという目標を抱いても可能性があるが、40歳ならばほとんどゼロに限りなく近いだろう。

年をとるにつれ、未来の可能性の幅が狭くなっていく。

勉強は比較的、大人でもやり直しがきく領域ではある。それでも、高校生のときに十分な教育が受けられずに未来の可能性を狭まってしまうと、やり直しが大変な労力となる。

受験においても、そのほかの人生の選択においても、自己の未来の可能性が子どものように広がっている状態になるようにできるかぎり努めることは大切だと思う。

参考・補足

  1. ただし、いくつかの塾では、鹿児島大学の現役の医学部・歯学部生がアルバイトをしている。わたしの友人は獣医学部だったが、彼女はかなり良い時給をもらっていた。しかも、質問受付係というような仕事で、質問をする生徒がいないときは、ずっと読書をしていたという。
  2. 例外として、親が高学歴で得意教科を教えられるような場合はある。鶴丸でトップクラスの成績だった友人は、親が数学や物理が得意で、わからない問題があったら親に聞いて教えてもらえるという話だった。
  3. 私の同期では(知る限り)3人が鹿児島県の教師になった。仲が良かった友達は、スポーツと子どもが好きだったため、教師が彼女にとっては天職なのだろうと思う。鶴丸生が教員になるケースは極めて少ないようだ。公務員でも、県庁や市役所の職員はそこそこいるのだが。

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