PR

人生や恋愛に迷ったら読むべき遺伝学の本『利己的な遺伝子』

突然ですが質問です。

Q. なぜ人間には男と女がいるのですか?

子どもにこんなことを聞かれたら、どのように答えますか? 

まあ、子どもに聞かれたら「夢を壊しかねない」なんて思うかもしれないので、逆に答えるのが難しくなるかもしれませんね。

まあだれでもいい、恋愛に悩んでる友達から、「なんで人間って男と女がわかれてるんだろ、性がなかったら、人生楽なのになー。なんで?」なんて言われたとして。

ある本を読む前、わたしはこの問いにたいして、「女は女になる組み合わせの染色体を持って生まれる」からだ。だから、わたしは女なのだ、というくらいにしか思っていませんでした。

遺伝子や染色体の仕組みは面白いし、進化も学べば学ぶほど面白い。それで生物学系の本は読み漁っていました。それも本棚一杯になるほど。

なんですが、この問いに関して、あまり深くは考えていませんでした。

わたしの答えでは、あるひとつの受精卵が男、または女に発生する理由について説明はしているけれど、「そもそもなぜ男と女がいるのか」ということには答えていません。

「神がアダムとイブを作ったから」とか「コウノトリがどうの」とかそういう神話的・宗教的な答えではなく、科学的になぜか。

けっこう難しい問いではないですか?

今日、この記事で紹介する本は、この問いに答えてくれる本です。

この本を読むと、ほかにも、

– なぜ悪人が得をするのか?
– なぜパートナーは浮気をするのか。浮気をするメリットは?
– なぜ寿命が決まっているのか。生物によって寿命が違うのか?
– 進化するとはどういうことなのか?
– どこまで遺伝するのか。身体能力か、頭の善し悪しか?

そんなことについて書かれた本で、生物学が好きな人ではなく、人生に迷っている人や、恋愛に悩んでいる人にわたしがおすすめしている本です。

科学の本なので、そこらの自己啓発本やエッセイよりも説得力があるし、「事実」なんですよね。占いとかハウツー本と違って根拠があるし普遍性がある。1

わたしは毎日、読書をしているので、ブログをはじめたからには、今までに読んで良かった本を少しずつご紹介していきたいと思っていました。

そして、どの本を紹介しようかな、と思って、まっさきに思い付いた1冊目がこれ。

だから、おそらくこれがわたしが好きな本・暫定ナンバーワンなのだと思います。

『利己的な遺伝子』
リチャード・ドーキンス著

この本は、タイトルが示しているように遺伝学・生物学に関する本で、『世界を変えた150の本』の1冊として紹介もされています。2大学の生物学系の学部では入門書として、いつも推薦図書となるような名著です。

しかし、この本は一般向けに書かれており、また若者に生物学に興味を持ってもらうために書かれているので、難しい生物学用語を極力使わずに書かれているので、生物学の知識が全くなくても楽しむことができます。

それでも、書かれている内容が深淵なのでそこそこ頭は使いますが。

本の中で著者も述べているように、題名の「利己的」という言葉が誤解を招きやすいし、ネガティブなワードだから避けられちゃいやすい本でもあります。

わたしも、利己的という言葉のイメージから、「なんかつまらなそうだな」とか、「どうせ、すべてを遺伝子が決めているっていう内容なんでしょ」と思って手をつけていませんでした。

しかし、有名すぎる本なので「生物が好きと言うからには一度くらい読んでおかなければ」というある種の義務感のようなものから読み始めました。

が、いい意味で期待を裏切られました!

遺伝子が「食べろ」と言うからヒトは食べる、遺伝子が「寝ろ」と言うからヒトは寝る。そして睡眠時間が足りないと「もっと寝ろ」と遺伝子が言うから眠い。

いま、わたしのブログを読みながら、遺伝子に命令されている人もいるのではないでしょうか? つまらないブログでごめんね。

そういう意味で遺伝子は「利己的」だと、著者は比喩で述べているのです。遺伝子は生き物ではなく、ただのDNAという物質なので、実際に命令を出すわけでもないし、利己的という性格をしているわけでもない。3

この本を読んで、遺伝子について考えるということは人生について考えることと同義なのだということを、初めて実感として感ぜさせられました。

比喩の名手と呼ばれるこの本の著者、リチャード・ドーキンス博士の文章は、本当にイメージが湧きやすい。生物学用語満載でページをめくる手が止まってしまう他の本とは違います。

「生きる」「人生」「寿命」「結婚」「家族」「恋愛」

そういったものを、科学的視点から考えられるようになりました。

この本、初版は40年以上まえに出版されているのです。

生物学は本当に最近進歩しているので、40年前だと情報が古いのではないかと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、その心配はありません。

生物学の根本というべき部分を語っているので、そう大きな変更はないんですよね。

料理に例えるならば、料理の作り方について書かれているのではなく、料理に使う材料や調味料の由来について書かれているって言う感じ。

唐辛子は中南米由来で、メキシコでは6000年前に使われていたのよ。唐辛子なんて言ってるけど、中国を指してない。唐辛子にはこうこうこういった成分が含まれているから、スパイシーで保存に効くのよ。みたいなかんじ。そんな生物の根本的な内容について述べられています。

また、いくつかは最新の研究ではっきりと変更されていたり、著者の意見が変わった点もあります。

そこには本文を変更するのではなく、本の後ろに注釈をつける形で掲載されています。このブログみたいにね。

利己的な遺伝子は、
– 10周年記念版
– 20周年記念版
– 30周年記念版
と、随時発売されていて、そのたびに注釈と本の冒頭の筆者の前書きが書き加えられています。

現在の最新版は「40周年記念版」です。4

ちなみに、この利己的な遺伝子が敬遠されるもうひとつの理由に「分厚い」があるんですよね。

しかし、本の最後の100ページ以上は注釈で、注釈を飛ばしても十分読めます。

というか、注釈は読み飛ばしたほうがいいとわたしは思っています。

全部ひととおり読んでから、さらに詳しく知りたかったら、注釈にも軽く目を通す、くらいの気持ちでよいのではないかと。5

もちろん、かなり「へぇ、そうなんだ」なんて思うことが満載な注釈ではあるのですが。

『利己的な遺伝子』には、「なるほど!」と思うことが100個くらい詰め込まれているのですが、ここでひとつだけ紹介します。

コロナ禍の真っ只中なので、ウイルスに関することを。

寒気がしたり、咳が出たりすると、私たちは通常その症候を、ウイルスの活動の迷惑な副産物だと考える。しかしいくつかの場合には、一人の寄主から別の寄主へ移り渡るための一助としてウイルスによって意図的に工作されたものである可能性の方がずっと高そうだ。単純に空気中に行きからはきだされることに満足せず、ウイルスは私たちにくしゃみや咳をさせて、ぱっと勢いよく吐き出させる。

わたしはずっと「風邪になると体内のウイルスを排出するために、体が反応している」としか考えたことがありませんでした。

それは「人間主体」の考え方ですよね。人間を中心として考え、人間にメリットがあるように思われる。

しかし、「遺伝子主体」つまりここではウイルスの目線になってみると、人間が咳をすることはウイルスにもメリットがあると考えられる。人間が咳をしてくれると、他の人間の体内に仲間を増やせ可能性が高まるんですから。むしろ、ウイルスへのメリットの方が大きいかもしれない。

だから、咳は「人間主体」の反応ではなく、ウイルスが人間に咳をさせているということも考えられるのではと。さらに厳密にいうと、「ウイルスの遺伝子が人間の体が咳をだすような影響を与えるように仕向けてている」ということ。

遺伝子はすべての生物が持っています。「遺伝子主体」に生物学を、科学を考えると、いかに常日頃、自分が人間中心の考え方をしているか、そして、人間中心の考え方に疑いを持っていないか、ということがわかります。

第8章 世代間の争い
第9章 雄と雌の争い
第10章 僕の背中を掻いておくれ、お返しに背中を踏みつけてやろう

このあたりの後半の章になると、実生活にも関係する人間関係や恋愛や性格にまつわるエピソードもあるのでとても面白いです。

 

ぜひ『利己的な遺伝子』を読んでみてください!

感想などもお待ちしています!

参考・補足

  1. 「科学的とはどういうことなのか」ということについて目から鱗が出るような話を読みたいなら、森博嗣『科学的ということはどういう意味か』という本を読んでみてください。こっちもとってもおすすめ!
  2. ほとんどが「古典」と呼ばれる本が150冊選出されている中で、利己的な遺伝子は最近書かれた本の中では数少ない一冊です。最近といっても出版されて40年以上経っていますが…
  3. 「DNA=遺伝子」ではないんですよね。DNAは物質名です。デオキシリボ核酸(deoxyribo nucleic acid)の頭文字を取っただけ。水素とか二酸化炭素とかグルコースとかと同じ、ただの物質です。まあ有機化合物なんで、無機である水素とかとはちょっと違うけれどね。
  4. 40周年記念版には前書きの追加がないのだけれど…
  5. わたしのブログの注釈も読み飛ばしてもらってかまいません。というか、読み飛ばしてください。わたし、話の内容が脇道に逸れちゃうんですよね。で、要点がはっきりしなくなって、読んでもらっている方にも失礼だし、って、それで注釈をつけることにしました。もし、面白い記事だと思ったら、注釈までチェックしてもらえると嬉しいです。基本、注釈はわたしの独り言か、厳密になにかを述べたいときに使ってます。読みやすくするためには、すこし厳密さを欠いてるほうがいいんですよね。たとえば、「DNA」と「遺伝子」と「ゲノム」は厳密には意味は違いますが、そんなの詳しく知りたい人なんて少ないだろうから、なんとなくで使われている文章をよく見かけます。「後輩へわれわれのDNAが受け継がれた」とか。

コメント